アクエリアンエイジSS


望みの雨




雨が降っている、冷たく強い雨だ
そんな中を私は歩いていた
なんてことのない、ただ雨が降っているだけの通学路
いつもと同じ帰り道・・・そのはずだった
ただ、なんとなく・・・いつもの道から少し外れ一本違う道を歩いていた。


ここは何もかもが違った
空気が違う、景色が違う、周りの全てが違う
いつも遊んでいた森もない、いつも一緒にいたあの人もいない
ここには自分の居場所がどこにもない
そして、雨が冷たかった。


人通りの少ない道を歩く、歩いたことのない道ではなかったが雨の中歩くのは少し新鮮に思えた
新鮮ではあるがつまらない道、そんな道を歩いているとなにかが見えた。
「あれは・・・犬?」
そこには一匹の犬が寒そうに体を縮こまらせていた
雨に濡れて、寒そうに寒そうに
私は思わず声をかけてしまっていた。
「あの、だいじょうぶですか?」


「**、*********?」
何を言っているのか分からない
言葉さえも違うのか
これからなにをすればいいの?帰ることはできるの?
失望に襲われる
ただ、ただ無意識に言葉が出てきた。
「助けて・・・」


「***・・・」
あ、そうか言葉が違うんだ
通じなければ、いくら救いの言葉を投げかけても意味は無い
それなら
私は"力"を解放する
私が嫌っていた"力"今も嫌いな"力"
でも今はこの子を助けるためにこの"力"を使う
今、この子が必要としているのは温かい言葉だから。


『私の名前は望、結城望・・・あなたの名前は?』

『フェンリル・・・名前はフェンリル!』



私の名前は『結城望』
Evolutional Girls Organization
E.G.O.に所属している超能力者
私の"力"はテレパス・・・他人の心を聞き自分の心を伝える
繋げる"力"
私はこの能力が嫌いだった・・・いや、今も嫌っている
この人の心に入り込む"力"は私を軽度の人間不信にさせた
今でも人と向き合うのは正直好きではない
なのに彼女とはとても自然に向き合えた・・・どうして?



『ここが私の家よフェンリル』
『小さい家、フェンリルの住んでたところはもっと大きかった』
『そ、そうなの・・・』
けっこう大きな家だと思っていただけに少し悲しい
ヨーロッパと日本の大きな差ってことかな
後でフェンリルが住んでいた所の話を聞いてみるのも悪くないかもしれないかな。

「ただいま」
鍵を開けて挨拶を一声
何も反応はない、当たり前だ今日は家にはだれもいない
それを分かっていたからこそこの"犬"を拾ってくることができたのだから
『ん?』
フェンリルは疑問に思ったかな
突然大きな声でなにか独り言を言ったのだものね。
『気にしなくていいのよ・・・雨に濡れて体が冷え切ってるし・・それに泥だらけ
まずはお風呂で体をあっためたほうがいいわね』



この子の名前は『フェンリル』
見た目は犬・・・狼らしい
そう、E.G.O.の敵ダークロア・・おそらくはそこに所属しているのだろう
そしてフェンリルという名前・・・神話には詳しくないけど聞いたことがある
そのフェンリルがこのフェンリルなら私はすごい敵を助けたことになる
誰かに知られたら大変だよね・・・



『この服は大切な服なんだ、大切な人がくれた服』
お風呂あがりにボロボロな服の事を聞いてみいたらこんな答えが返ってきた
『そう、だったらきちんと洗濯しておいたほうがいいわね・・・あれ?下着は?』
『フェンリルあんなのいらない、窮屈なだけだもん』


『望いい匂い・・・』
『ちょっとフェンリル?!』
『牛肉の匂い・・・・』
『あ・・・うん夕食、おなか空いてるでしょ?』


『おやすみ・・・・・ありがとう』



私は惹かれていた、この無邪気な狼に
心に嘘のない狼に
この、かわいくて・・・でも危険な力を持った狼
その狼ともう少し一緒にいたいと思っていた。



「おやすみなさいフェンリル」



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